<焼却灰>民間に“処分委託” 有害物含む 東京・埼玉
 東京・多摩地区の9市と埼玉県の2市が、家庭ごみなど一般廃棄物の「焼却灰」1万6000トンを、茨城県の民間工場に運び、再利用する実験への「材料提供」名目で開発委託料を払い事実上の処分をしていたことが毎日新聞の調べで22日分かった。廃棄物処理法では、焼却灰は有害物を含むため、環境に影響を与えない最終処分場への埋め立てを定めているが、再生品の一部はインドネシアに輸出されていた。厚生省環境整備課は「工場は実験施設ではなく、廃棄物の処理施設に当たる可能性が強い」とし、同法違反の疑いがあるとみて、都県を通じて事情を聴くが、今回の問題の背景には、処分場の不足と法的整備の“抜け穴”があるとの指摘もある。 
 焼却灰を委託していたのは、武蔵野、三鷹両市と、二枚橋衛生組合(調布、府中、小金井市で構成)、柳泉園組合(田無、保谷、東久留米、清瀬市で構成)、埼玉県の桶川、上尾両市の計11市。
 民間工場は、関係者によると、焼却灰の再資源化施設として1995年4月、約10億円をかけ茨城県内に建設、日量約30トンの処理能力がある。独自の添加剤を加えて約800度で燃焼し、さらにセメントなどと混合して有害物質を封じ込め、軟弱地盤の改良材として再利用している。この再生品にはダイオキシンなど有害物質が含まれたままだが、法的規制はない。
 工場関係者によると、再生品のうち約2キロが土壌改良材として一昨年11月と昨年10月の2回、計2キロが輸出されていた。現地でインドネシア政府が進める農地開拓の道路用に売り込む目的で、現場でデモンストレーションとして使用されたという。有害廃棄物の国際移動はバーゼル条約で規制されて、焼却灰も対象になる。通産省は「製品としてなら問題ない」としているが、厚生省は、具体的な状況をみなければ即断できないとしている。
 民間工場への委託は三鷹市が最も早く95年10月から。同12月に武蔵野市と二枚橋組合、96年度から柳泉園組合、97年度からは埼玉の2市が加わった。毎日新聞が入手した武蔵野市と企業側の契約書や開発業務仕様書によると、焼却灰再資源化の開発業務を市側が企業に委託することを明記したうえで、委託費用はトン当たりで支払う▽再生品は企業の責任で処理する――ことなどが決められていた。
 厚生省環境整備課は、今回のケースについて、(1)委託期間が長い(2)大量に持ち込んでいる(3)開発委託費が一括払いでなくトン当たり払い――などから実験ではなく、実質的に廃棄物処理法の適用を受ける焼却灰の処理にあたるとの見方を強めている。
 これに対し、三鷹市は「委託費をトン当たりで支払う方法が誤解を招くかもしれないが、処分費ではない。期間が長くなったので評価しなおす必要はあると考えている」と話す。武蔵野市は「処分という見方もできるだろうが、再資源化を進めるためには応分の負担が必要だ」。また、工場を経営する社長(63)は「テストを重ね、安全性も十分配慮している」としている。
 [毎日新聞3月22日]