<ダイオキシン禍>キノコでダイオキシン分解を証明

 ゴミ焼却場から排出される猛毒の発がん性物質ダイオキシンが、自然のキノコで分解できることを、九州大学農学部木材化学講座の近藤隆一郎助教授(森林生物化学)らのグループが確認した。キノコでダイオキシンを分解できることは同グルーブなどが実施したモデル実験で分かっていたが、実際に応用できたのは世界でも初めて。4日、静岡大学である木材学会で発表する。
 このキノコは、倒木の上で成長する「白色腐朽菌」と呼ばれるタイプでシイタケもその仲間。樹木に含まれる難分解性物質の高分子化合物リグニンを分解できるのは白色腐朽菌の出す酵素だけで、この特徴から石油化合物や農薬など難分解性物質の解毒化に応用する研究が約10年前から進んでいる。
 近藤助教授らのグループは「菌の酵素で難分解性のダイオキシンも無毒化できないか」と着目。約5年前から鹿児島屋久島や沖縄県石垣島などの密林で採取した菌140種で実験した。
 今回実験に使ったのは、九大宮崎演習林(宮崎県椎葉村)で採取した菌の一つで、専門器材を持つ排水処理会社に測定を依頼。菌を生育させた木くずと米ぬか計40グラムに、ゴミ処理場の集じん機から採取した焼却灰10グラムと水20ミリリットルを混合、50日後に測定したところ、ダイオキシンが24・8%減少していた。
 近藤助教授らは「今まではモデル実験だけだったので、菌が無機物の焼却灰の中で実際に育つか不明だったが、予想以上の効果が出た。焼却灰の処理に実用化できるのではないか」と期待している。 【神戸 金史】

 [毎日新聞4月2日]