■上下の電車を見送って、
お隣のねじり橋へ、歩いて向かいます。
六把野井水拱橋(ろっぱのいすいきょうきょう)は
正径間 5.9m、斜径間 9.1m、巾員W=2.5m
斜架角 θ=40度、 起拱角 β=37度
と、堂々たるねじりまんぽです。
また、現存するねじりまんぽでは、
唯一のコンクリートブロック製です。
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南面 |
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北面 |
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尋常ではないねじりです |
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造った人達の銘板/工事を請け負った郡竹治郎の名が左端にあります |
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実測起拱角 β=37度 |
付近のサイン |
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明るすぎて距離計のレーザが見えないので、プレートを置いてもらっています。 |
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■まだコンクリートが珍しかった時代。
東京駅(大正3年(1914)竣工)ですら
鉄骨煉瓦造(コンクリート造床)で建設された時代。
鈴鹿山麓の地方鉄道で試みられた、凛とした土木構造物だといえます。
出所は不明ですが、建設中の写真も公開されています。
当時の人達の心意気までが伝わってきます。
■六把野井水拱橋は大正5年(1916)竣工。
以来100年、鉄道橋梁としてその荷重に耐え、
今も現役で働く姿に感動です。
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六把野井水拱橋、建設中の写真/クリックで大きな写真 |
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海外のコンクリートブロックねじりまんぽ
施工中の写真/1898
Sickergill Skew Bridge
over the River Raven
at Renwick |
(上2枚は100年以上前の写真で、著作権が切れているので掲載しました)
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■写真をとったり計測したり、あっという間に1時間。
11時43分麻生田(おうだ)発上りと
11時51分楚原(そはら)発下りの列車が通過する時刻です。
踏切が鳴るだろうと思っていたら、今度は全然聞こえません。
再び油断を突かれ、上り電車がやってきました。
またまた、あわてて明智川拱橋の通過場面を撮影。
走って六把野井水拱橋に戻ろうとしましたが、
今や学生時代陸上部の面影もなく・・・・・・・間に合いませんでした。
しかたなく、年相応に次の列車を現場で待ちます。
すると、しばらくして楚原(そはら)発下りの列車が通過。
これも黄色い電車。ラッキー!!
今回は上手く撮れました。
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麻生田(おうだ)発上り⇒/私・・・走ってます(たけちゃん撮影) |
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←じっくり待って撮った楚原(そはら)発下りの列車 |
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■気がつけば12時を回っています。
お腹が空きながらの帰路、
蕎麦が名物らしいので、適当なところを探しながら、
八風街道まで戻ってきました。
永源寺近くで目に入った
レストラン「ふる里」
で 昼食をとることにします。
その後、永源寺を参拝します。⇒詳しくはちょっとお出かけ>永源寺をご覧下さい。
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データシート |
図−β実測値と理論値の比較(クリックで拡大図)
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■坑門角α=斜架角θとした場合、
斜架角 θ=40度のβ(起拱角)の理論値は37°
実測値も37°で理論値とぴったり同じです。
文献2)「鉄道と煉瓦」に記されている
斜架角θ=40°
とも合致します。
以上の調査データをまとめ、データシートとしてPDFにしました。
⇒⇒No9 六把野井水拱橋 調査データ(PDF)
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■なお上記「調査ーデータ」を作成するにあたっては、下記の考えに従いました。
●ねじりまんぽの番号
/「鉄道と煉瓦」表4-1”一覧表”(P117)における番号を採用。
●方向
/東西南北の表示は主たる方向とした。
●経度緯度
/ 国土地理院地図-航空写真閲覧サービス より求めた。
●煉瓦形状
/手作り煉瓦であるので寸法にバラツキがある。故に代表値。
●積み方/イギリス積み、オランダ積みの区分
(今回は無関係)
/コーナーの仕上げ形状により、イギリス積みとオランダ積みが区分されるので、
/文献「鉄道と煉瓦」にならい、一般的に”イギリス積み”と表記。
/ただし、コーナー部が”オランダ積み”と確認できたもののみ”オランダ積み”と表記。
●θβの左右区分
/「鉄道と煉瓦」にならい、側壁に向かってアーチの煉瓦が右上がりの場合「右」
、左上がりの場合「左」 と表記。
●中心キロ程(今回は不明)
/現行距離程による。(開業時とは異なる)
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検 証 |
■2.5mと言う狭い幅員なのに、
何故、普通のコンクリートブロックアーチ橋
にしなかったのか?と言う疑問が残ります。
用地幅は増えますが、その方が簡単です。
高さが合わなかったのでしょうか。
技術を示したかったのかもしれません。
■検証してみます。
この橋梁を半円アーチ橋で1連で造った場合、
径間が3m伸びる必要があります。
その場合の径間は9.1+3=12.1m、
アーチ高はその1/2ですので h2=6.05mとなります。
とても今の地盤面からの高さでは無理です。
■欠円アーチにした場合でも、
アーチ高は、3.8mとなります。
(山崎煉瓦アーチ群「老ノ辻3連橋」「神足6連橋」に準じて、
アーチ高=0.55×半径R としました。)
■一歩譲って2連にした場合、単純二等分としても、
橋脚幅を考慮して、アーチの高さ h2=約2.7mとなります。
今より低くはなりますが、
水路と里道の間に橋脚が必要です。
お隣の明智川拱橋の例では厚さ1.2m以上です。
里道か水路か、いずれかを捻らなければなりません。
これを「ねじりまんぽ」とすれば、
正径間は5.9m、アーチ高はたったの2.9mです。
橋脚も入らず、水路も今までどおり里道もまっすぐ通せるのです。
■ミソはここに有ったのでは無いでしょうか。
当時の人はどう考えたのか?
大正時代の大先輩達の思考に思いをはせるロマンです。
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■下の写真は、たけちゃん作成の展開図と模型です。
たけちゃんのブログより⇒Day by day(外部リンク)(あたらしい画面が開きます)
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六把野井水拱橋/位置図
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