関空は「宝の漁場」 魚釣り“解禁”太公望250人

分布調査名目で初 ネットで募集

 関西国際空港で魚釣りが“解禁”−。関空会社が企画した関空島岸壁での「ファミリー魚つり調査」が三日から始まり、家族連れら約六十五組二百五十人が参加した。同島周辺は禁漁区で、魚の分布調査名目ながら、一般を対象に釣りが認められたのは平成六年の開港以来初めて。待ちかねた太公望たちは、歓声をあげながら次々と魚を釣り上げていた。

 釣り調査が行われたのは、関空島北端の岸壁約二百五十メートルのエリア。同日早朝から訪れた大阪府東大阪市の会社員、東浦あきらさん(四一)は「一分もたたないうちにかかってくる」と笑顔をみせ、メバルやカサゴ、ベラなど、友人と二人で、一時間で二十匹以上を釣り上げたという。

 「岩場と違って足もとが安全だし、子供を連れてきても安心」とは、孫二人ら家族六人で訪れた同府柏原市の無職、山本豊晃さん(六八)。岸壁には肩が触れるほどの間隔で参加者が糸を垂れ、だれかが釣り上げるたびに歓声が響いた。

 関空の護岸沿いには五十三ヘクタールの藻場が形成され、メバルやカサゴなど百五十種類以上の魚介類の生息が確認されている。しかし、府の漁業調整規則で魚の採捕は禁止されており、海釣り公園の整備を求める釣りファンらを残念がらせていた。

 九月までの休日などに行われる今回の企画は、名目は魚の分布調査だが、平成十九年の二本目滑走路の供用開始を目指して何とか利用促進を図りたい同社の、旅客以外の集客アップの狙いもみえる。

 釣った魚は大きさや重さを測定し、生息の確認などに役立てるというが、釣りファンにとっては宝の山ならぬ「宝の漁場」での釣りが楽しめるとあって、人気沸騰。事前のインターネットでの申し込みでは約十七万件のアクセスが殺到した。

 関空島と対岸とを結ぶ連絡橋でも、一日から「値下げ実験」(普通車往復千七百三十円が九百円など)が行われている。大阪府堺市の会社員、桜井勝さん(六四)は「子供も楽しめるし、大きな魚もたくさん釣れる。連絡橋の通行料金も、他地域の渡船代などと比較すれば気にならない」。別の男性も「ファミリーで楽しめ、空港という場所で釣りができるのが魅力的」と話した。

 一方で、府漁業協同組合連合会の関係者は「漁業者はダメなのに、一般の人が魚釣りをするのに多少の抵抗感はある」とやや複雑な表情を浮かべ、「イベントで関空周辺の魚がどうなるのかみていきたい」。また、「通行料や車の駐車場が気になる」「ファミリーで来る場合の他の楽しみ方も必要」と注文をつける参加者もいた。

 国内線低迷などの影響を受け、平成十五年度に過去最低の旅客数となった関空にとって、集客は急務。それだけに、関空関係者は今回の企画に期待を寄せる。同社は「参加者にアンケートを行い、ニーズ把握に努めるとともに、調査結果をみながら今後、どういう利用が望ましいか考えていきたい」としている。