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KITAHATA URBAN DESIGN CORPORATION

東除川橋梁
ひがしよけがわ


平成28年3月21日撮影


アクセスが難儀なぁ〜

■昨年、平成27年5月10日、

所用があって奈良葛城山麓へ行った帰りに、

ここはちょいと下見をしていました。

というのも、グーグルアースで見るかぎり、

アクセスが難しそうだったからです。


実際下見に行ってみて悩みました。

結論が出ないまま、取り敢えず二つのアクセス方法を考えて

今回の挑戦となりました。

メンバーは前回(六把野井水拱橋)、前々回(烏谷川橋梁第248号橋梁)同様、
高校以来の友達たけちゃんと、HIROさんの三人です。


■上流側(狭山池側)は段擁壁になっています。

上段2.0〜2.5mの落差を降りる事(問題なのは登ることですが)さえできればれば、

護岸天端から河床までは”足掛金物”が有るところが2箇所もあるので、

アクセスは可能です。

しかし、学校のグラウンドのま横なので、

人目も気になりますし、多少勇気が必要です。

真剣に脚立を持ってこようかとも思いましたが、

目立ち過ぎるので止めました。


■踏切を渡り下流側に行くと、道路が川を横断しています。

ネットを調べると、ここから

     飛び降りた

と書いている方がおられましたが、

その方は、

    手さえ掛かれば飛び上がれる

そうで、とても我々にはマネが出来そうもありません。


道路から下流は左右に民地が張り付いており

マンションの敷地内や、柵で覆われた駐車場や雑木林なので、

不審者に間違われそうです。
同行のたけちゃんは、東海道線茨木付近で

”お巡りさん”に”職務質問”された”実績”があるだけに

慎重にならざるを得ません。


そこで考えた第二の方法はさらに下流のマンション敷地の切れ目。

グーグルアースで見ると、少し護岸が低そうです。

「ねじりまんぼ」までは河床を200m以上遡らなければなりませんが、

木々が生い茂っているので、人目はなさそうです。


■ということで、まずこちらに行ってみました。

ところが、現場を見て唖然。

護岸が高く、全く降りられそうもありません。

降りたとしても梯でも無ければ戻れません。


後から分かったことですが、

マンボから下流に見えただけでも2段の落差工があり、

おまけに斜路となっているので、ズブ濡れ覚悟で無い限り無理でした。



力ずくのアクセス

■ということで、下流からのアクセスは諦め

何とかなるだろうと車を狭山池博物館の駐車場に停め、
HIROさんを残して現場まで歩きました。

二人で、上下流を見て上流からに決定。

よくよく見ると上下段とも足掛金物が有る場所がありますが、

ネットを張った学校のグランドの横を歩かなければなりません。

校舎から誰か見てたら騒ぎになるかもしれません。
そうこうしてるうちにのたけちゃんが

学校のグラウンドに入る橋の欄干を超え、下流側天端に出ました。

私はてっきりグランドの横を歩いて行くと思っていたら、

そこから下へ降りて仕舞いました。

仕方なく私もそこから下段護岸の天端におりました。
後から聞くと、たけちゃん、

上下段とも足掛金物が有るのは見えてなかったそうです。

橋桁の下で長靴に履き替え、

護岸天端を下流に20mほど歩き、

足掛金物を伝って河床に無事到着しました。



上流側風景。右岸はグラウンド
上流から下流を望む。突き当たりのアーチが南海高野線ねじりまんぽ。
上流側から下流を望む
上流側から下流を望む。道路の橋桁と水管橋が見える
側壁はイギリス積、アーチは長手積。
起拱角は背が届かなかったため写真判定で 20°
下流側、結構汚れが激しい。
上下流側とも端面はセメントが塗られ、端面形状や巻数の確認は出来ない
左岸基礎部分 右岸基礎部分
左岸基礎部分 右岸基礎部分
右岸の側壁煉瓦段数は29段、左岸は30段。
水につかっている部分が違うことからも確認出来る。
上流側右岸端部、側壁はイギリス積。
端部処理は他の煉瓦側壁のねじりまんぽ同様オランダ式となっている
帰りはここから二人で協力し合って登りました


データシート

■東除川橋梁(ひがしよけがわきょうりょう)は


    正径間 3.63m、斜径間 3.86m、(上流側)

    巾員W=12.82m(左岸)

    斜架角 θ=70度(坑門角とした)、 起拱角 β=20度(写真判定)

上記の数字は平成28年4月9日再測結果に基づき修正しました。

後の複線化の影響で殆どが片側端面しか確認出来ないJRの「ねじりまんぽ」と違い、

両端面が確認出来、高さも最大級の堂々たるねじりまんぽです。
また、”たけちゃん”が気づいたのですが、

右岸の側壁煉瓦段数は29段、左岸は30段、

右岸と左岸で側壁段数が1段異なり、基礎煉瓦の段数で調整している。


図−β実測値と理論値の比較(クリックで拡大図)

■坑門角α=斜架角θとした場合、

斜架角 θ=70度のβ(起拱角)の理論値は13°

結構捻りすぎということになります。


また、文献2)「鉄道と煉瓦」の斜架角は「左60°」

となっていますが、「右」の誤りです。 

以上の調査データをまとめ、

データシートとしてPDFにしました。
(平成28年4月9日再測結果に基づき修正)

⇒⇒No24東除川橋梁 調査データ(PDF)
    (新しいウインドウが開きます)
    

■なお上記「調査ーデータ」を作成するにあたっては、下記の考えに従いました。

●ねじりまんぽの番号
 /「鉄道と煉瓦」表4-1”一覧表”(P117)における番号を採用。

●方向
 /東西南北の表示は主たる方向とした。

●経度緯度
 / 国土地理院地図-航空写真閲覧サービス より求めた。

●煉瓦形状
 /手作り煉瓦であるので寸法にバラツキがある。故に代表値。

●積み方/イギリス積み、オランダ積みの区分
 /コーナーの仕上げ形状により、イギリス積みとオランダ積みが区分されるので、
 /文献「鉄道と煉瓦」にならい、一般的に”イギリス積み”と表記。
 /ただし、コーナー部が”オランダ積み”と確認できたもののみ”オランダ積み”と表記。

●θβの左右区分
 /「鉄道と煉瓦」にならい、側壁に向かってアーチの煉瓦が右上がりの場合「右」 、左上がりの場合「左」 と表記。

●中心キロ程
 /現行距離程による。(開業時とは異なる)


東除川橋梁/位置図


余  談

■近くの狭山池の”コシノヒガン桜”は5分咲き。

河津桜よりは遅いものの早咲きの桜です。

ついでに、ピンク色のユキヤナギも発見しました。




■その後矢穴の資料を探しに、和歌山城横の「岡公園」まで行きました。

私の記憶では

  矢穴を空ける道具が展示してある

というものでしたが、私の勘違い。

本当は天守閣に展示してあるそうで

目的を達することができませんでした。


岡公園内の矢穴も1箇所しか発見できませんでした。

また、お城の桜も全く咲いていませんでしたが、

お城の駐車場は満杯。長蛇の列でした。

我々は偶然美術館の駐車場に入れましたが、

比較的空いていました。


公園の中に岩山というより、まさに石切場跡が公園に
子供達の遊び場なので、石を突っ込んだりして傷だらけ




INFORMATION

1.「ねじりまんぽ」とは
2.「ねじりまんぽ」を見に行こう
3.「ねじりまんぽ」の構造
4.「ねじりまんぽ」建設再現
5.番外偏
6.マスコミで紹介されました
7.「ねじりまんぽ」一覧表
8.参考文献/参考外部リンク


参考文献

1) 斜架拱(しゃかきょう)
/伊藤鏗太郎(イトウ コウタロウ)編訳/1899年(明治32年)

 我が国で初めて斜架拱”ねじりまんぽ”を単独で取り上げた書物と思われます。
 国立国会図書館・蔵書検索システム(外部リンク)で検索すると、原著のPDFデータを閲覧ダウンロードすることができます。


2) 鉄道と煉瓦−その歴史とデザイン

/著者;小野田 滋(おのだしげる)/鹿島出版会/2004発行

 煉瓦の歴史や組積方法鉄道構造物としてのデザイン等について記されています。
 全国45都道府県を調査した”足で書かれた論文”で、現在も購入可能です。


3) 阪神間 ・京阪間鉄道における煉瓦 ・石積み構造物とその特徴

/著者;小野田 滋/土木史研究 第20号/2000.5

 京阪神間の煉瓦 ・石積み構造物の特徴を捉え、現地調査結果をまとめています。(PDF/外部リンク

4) 組積造による斜めアーチ構造物の分布とその技法に関する研究
/著者;小野田 滋、河村清治、須貝清行、神野嘉希/土木史研究 第16号/1996.6

 「ねじりまんぽ」の分布や技法についてまとめた論文です。(PDF/外部リンク

5) 関西地方の鉄道における「斜架拱」の分布とその技法に関する研究」

/JR西日本 河村清治、小野田滋、木村哲夫、菊池保孝/土木史研究 第10号/1990.6

 JR西日本管内の「ねじりまんぽ」を本格的に調査し、まとめています。(PDF/外部リンク

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