データシート |
■インクライン「ねじりまんぽ」の実測諸元については
起拱角以外は、たけちゃんの観測を採用しました。
(参考ブログ・蹴上のねじりまんぽ/2016.4.8)
なお、「斜架角 θ」については、
2箇所の「正径間 W」と「斜径間 a」の実測値から計算される値(76.7°、75.1°)と
デジタル分度器による実測値(74.7°)の平均値(75.5°≒76°)とした。
■上記より、実測諸元を下記のとおりとしました。
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正径間 |
W= |
2.56m (2ヶ所平均)
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斜径間 |
a= |
2.67m (2ヶ所平均)
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巾員 |
L= |
18.31m (3回計測平均)
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斜架角 |
θ= |
76度 (計算値と実測の平均)
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起拱角 |
β= |
18度 (16°〜19°)たけちゃん測定
17度 (16.5°〜18.4°)北畑測定
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図−β実測値と理論値の比較(クリックで拡大図)
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■坑門角α=斜架角θとした場合、
斜架角θ=76度の場合の起拱角βの理論値は9度です。
また、文献2)「鉄道と煉瓦」では
斜架角θ=70度
W=2.13m、a=2.27m
となっており、これから理論値を求めると
β=13度
となります。
いずれも二人の実測平均値17〜18°とは大きな隔たりがあります。 |
つまり、「蹴上インクラインのねじりまんぽ」は
・文献2)「鉄道と煉瓦」の値は実測と合わない
・理論値の倍近く拗っている
ということになります。
平たく言えば「ねじりすぎ」。
(「鉄道と煉瓦」の値が実測と合わないケースは他にも有り、
No15-旧東川橋梁においても斜架角θが大きく異なっています。
また、斜架角の左右表記が違っているところもあります。)
■以上の調査データをまとめ、未計測項目がありますが、
データシートとしてPDFにしました。
⇒⇒No21 インクライン 調査データ(PDF)
(新しいウインドウが開きます)
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■なお上記「調査ーデータ」を作成するにあたっては、下記の考えに従いました。
●ねじりまんぽの番号
/「鉄道と煉瓦」表4-1”一覧表”(P117)における番号を採用。
●方向
/東西南北の表示は主たる方向とした。
●経度緯度
/ Googleマップ より求めた。
●煉瓦形状
/手作り煉瓦であるので寸法にバラツキがある。故に代表値。
●積み方/イギリス積み、オランダ積みの区分
/コーナーの仕上げ形状により、イギリス積みとオランダ積みが区分されるので、
/文献「鉄道と煉瓦」にならい、一般的に”イギリス積み”と表記。
/ただし、コーナー部が”オランダ積み”と確認できたもののみ”オランダ積み”と表記。
●θβの左右区分
/「鉄道と煉瓦」にならい、側壁に向かってアーチの煉瓦が右上がりの場合「右」
、左上がりの場合「左」 と表記。
●中心キロ程
/現行距離程による。(開業時とは異なる)
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■そもそも、斜架角θが75度を越える「ねじりまんぽ」は
現存するものとしては
No3-車場川橋梁(信越本線)
/「鉄道と煉瓦」より斜架角θ=75度
No26-東皿池橋梁(JR神戸線)
/「鉄道と煉瓦」より斜架角θ=75度
/実測値 73度
の2箇所しか有りません。
(「鉄道と煉瓦」ではインクラアイン以外で5箇所)
果たしてこんな”ややこしい”ことをしてまで拗る理由があったのでしょか。
ねじりで無くても良かったのでは?
■以降は私と”たけちゃん”の想像でしか有りません。
琵琶湖疏水の建設当時は、
現存する最古のねじりまんぽと思われる
東皿池橋梁
の建設(1874)から既に14年を経ており、
ねじりまんぽの設計・施工技術も確立していると思われます。
それどころか、1883(明治16)年には、
小野田セメントがセメントの国内生産に成功しており、
鉄筋コンクリートの技術も周知のはずです。
琵琶湖疏水には、明治36(1903)年7月に竣工した、
日本最初の鉄筋コンクリートで造られた橋が架かっています。
そこで考えられることは・・・。
この拗りすぎは設計者・田辺朔郎の思い入れと
遊び心
が造った「観光商品」だったのでは無いでしょうか?
理屈より”見た目”を重要視し、
最大級の”ねじり”にしたのでは??
■理論どおりの施工では、
出入り口部の「迫持ち効果」がほぼ確保できますが、
拗りすぎると「迫持ち効果」が”得られない”部分が大きく出てきます。
下図にてABCに囲まれる部分が
「迫持ち効果」の期待できない部分になります。
施工ではレンガの長さを調整し、
端部に定尺ものを持って来ています。
それでもACの長さは約60cm。
起拱角が倍ほど違うからと言って、
理論どおりに設計する場合とさほど大きな差はありません。
田邊朔太郎は、
ねじり過ぎても、この程度なら
レンガの長さを調節すれば大丈夫
と確信していたはずです。
本来、斜めに横断するため通常の積み方では出入口部で
「迫持ち効果」が”得られない”部分
がどうしても発生します。
それを避けるために”ねじり”の構造にするのです。
これが”ねじり”の目的なのに、拗りすぎて
「迫持ち効果」が”得られない”部分
が増えてしまっている。
”見た目”を優先しために、
主客転倒したことを堂々とやっているわけです。
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起拱角β=18度/たけちゃん作成
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No21-インクライン
2010(平成22)/3/27撮影
良く拗ってあります
No11-市三宅田川橋梁/斜架角θ=78度
インクラインのまんぽは
理論上だとこの程度のねじりで良かったはずです。
見た目、インクラインほどの迫力はありません
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位置図
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