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KITAHATA URBAN DESIGN CORPORATION

粟田口トンネル
インクライン・ねじりまんぽ
ver-2

撮影/令和2年10月6日(火)

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ねじりマンポ もくじ
1.「ねじりまんぽ」とは
2.「ねじりまんぽ」を見に行こう
3.「ねじりまんぽ」の構造
4.「ねじりまんぽ」建設再現
5.番外偏
6.マスコミで紹介されました
7.「ねじりまんぽ」一覧表
参考文献、リンク
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一番有名な、ねじりまんぽ

■「ねじりまんぽ」の中の「ねじりまんほ゜」

一番有名な「ねじりまんぽ」です。

「ねじりまんぽ」に興味を持った経緯や

インクライン、琵琶湖疏水の歴史に関しては

   インクライン-1びわ湖疎水船

に記していますので、

ここでは、構造上の諸元について述べたいと思います。

インクライン

インクラインの風景/2019-4-1

インクラインの風景/2019-4-1

特徴は「遊び心」

■銘板のある「ねじりまんぽ」は、おそらくここだけで、

両サイドにのアーチ上部に当時の京都府知事

北垣国道の扁額(銘板)があり、

南西側(三条通り側)には、

   雄観奇想

北東(南禅寺側)には

   陽気発処

と書いてあります。


南西側(三条通り側)/2010-3-27
南西側(三条通り)/雄観奇想/2019-4-1 北東側(南禅寺側)/陽気発処/2019-4-1
北東側(南禅寺側)/2010-3-27


北側の起拱角の3ヶ所平均値は

β=90°−72.6°=17.4°

データシート

■インクライン「ねじりまんぽ」の実測諸元については

起拱角以外は、たけちゃんの観測を採用しました。

(参考ブログ・蹴上のねじりまんぽ/2016.4.8)

なお、「斜架角 θ」については、

2箇所の「正径間 W」と「斜径間 a」の実測値から計算される値(76.7°、75.1°)と

デジタル分度器による実測値(74.7°)の平均値(75.5°≒76°)とした。

■上記より、実測諸元を下記のとおりとしました。



  
正径間  W= 2.56m (2ヶ所平均)

斜径間  a= 2.67m (2ヶ所平均)

巾員   L= 18.31m (3回計測平均)

斜架角  θ= 76度 (計算値と実測の平均)

起拱角  β= 18度 (16°〜19°)たけちゃん測定

17度 (16.5°〜18.4°)北畑測定



図−β実測値と理論値の比較(クリックで拡大図

■坑門角α=斜架角θとした場合、

斜架角θ=76度の場合の起拱角βの理論値は9度です。

また、文献2)「鉄道と煉瓦」では

   斜架角θ=70度

   W=2.13m、a=2.27m

となっており、これから理論値を求めると

   β=13度

となります。

いずれも二人の実測平均値17〜18°とは大きな隔たりがあります。

つまり、「蹴上インクラインのねじりまんぽ」は

  ・文献2)「鉄道と煉瓦」の値は実測と合わない

  ・理論値の倍近く拗っている

ということになります。

平たく言えば「ねじりすぎ」。


(「鉄道と煉瓦」の値が実測と合わないケースは他にも有り、

No15-旧東川橋梁においても斜架角θが大きく異なっています。

また、斜架角の左右表記が違っているところもあります。)


■以上の調査データをまとめ、未計測項目がありますが、

データシートとしてPDFにしました。

⇒⇒No21 インクライン 調査データ(PDF)
    (新しいウインドウが開きます)
    

■なお上記「調査ーデータ」を作成するにあたっては、下記の考えに従いました。

●ねじりまんぽの番号
 /「鉄道と煉瓦」表4-1”一覧表”(P117)における番号を採用。

●方向
 /東西南北の表示は主たる方向とした。

●経度緯度
 / Googleマップ より求めた。

●煉瓦形状
 /手作り煉瓦であるので寸法にバラツキがある。故に代表値。

●積み方/イギリス積み、オランダ積みの区分
 /コーナーの仕上げ形状により、イギリス積みとオランダ積みが区分されるので、
 /文献「鉄道と煉瓦」にならい、一般的に”イギリス積み”と表記。
 /ただし、コーナー部が”オランダ積み”と確認できたもののみ”オランダ積み”と表記。

●θβの左右区分
 /「鉄道と煉瓦」にならい、側壁に向かってアーチの煉瓦が右上がりの場合「右」 、左上がりの場合「左」 と表記。

●中心キロ程
 /現行距離程による。(開業時とは異なる)


■そもそも、斜架角θが75度を越える「ねじりまんぽ」は

現存するものとしては

  No3-車場川橋梁(信越本線)
  /「鉄道と煉瓦」より斜架角θ=75度

  No26-東皿池橋梁(JR神戸線)
  /「鉄道と煉瓦」より斜架角θ=75度
  /実測値 73度

の2箇所しか有りません。

(「鉄道と煉瓦」ではインクラアイン以外で5箇所)

果たしてこんな”ややこしい”ことをしてまで拗る理由があったのでしょか。

ねじりで無くても良かったのでは?


■以降は私と”たけちゃん”の想像でしか有りません。

琵琶湖疏水の建設当時は、

現存する最古のねじりまんぽと思われる

  東皿池橋梁

の建設(1874)から既に14年を経ており、

ねじりまんぽの設計・施工技術も確立していると思われます。

それどころか、1883(明治16)年には、

小野田セメントがセメントの国内生産に成功しており、

鉄筋コンクリートの技術も周知のはずです。

琵琶湖疏水には、明治36(1903)年7月に竣工した、

日本最初の鉄筋コンクリートで造られた橋が架かっています。


そこで考えられることは・・・。

この拗りすぎは設計者・田辺朔郎の思い入れと

   遊び心

が造った「観光商品」だったのでは無いでしょうか?

理屈より”見た目”を重要視し、

最大級の”ねじり”にしたのでは??


■理論どおりの施工では、

出入り口部の「迫持ち効果」がほぼ確保できますが、

拗りすぎると「迫持ち効果」が”得られない”部分が大きく出てきます。

下図にてABCに囲まれる部分が

「迫持ち効果」の期待できない部分になります。

施工ではレンガの長さを調整し、

端部に定尺ものを持って来ています。

それでもACの長さは約60cm。

起拱角が倍ほど違うからと言って、

理論どおりに設計する場合とさほど大きな差はありません。


田邊朔太郎は、

  ねじり過ぎても、この程度なら

  レンガの長さを調節すれば大丈夫

と確信していたはずです。


本来、斜めに横断するため通常の積み方では出入口部で

   「迫持ち効果」が”得られない”部分

がどうしても発生します。

それを避けるために”ねじり”の構造にするのです。

これが”ねじり”の目的なのに、拗りすぎて

   「迫持ち効果」が”得られない”部分

が増えてしまっている。


”見た目”を優先しために、

主客転倒したことを堂々とやっているわけです。



起拱角β=18度/たけちゃん作成








No21-インクライン
2010(平成22)/3/27撮影
良く拗ってあります


No11-市三宅田川橋梁/斜架角θ=78度
インクラインのまんぽは
理論上だとこの程度のねじりで良かったはずです。
見た目、インクラインほどの迫力はありません


位置図



INFORMATION

1.「ねじりまんぽ」とは
2.「ねじりまんぽ」を見に行こう
3.「ねじりまんぽ」の構造
4.「ねじりまんぽ」建設再現
5.番外偏
6.マスコミで紹介されました
7.「ねじりまんぽ」一覧表
8.参考文献/参考外部リンク

■なお、インクライン-1でも述べました、

ここのねじりマンポに関しては

毎日新聞と朝日新聞から、私とたけちゃんが取材を受け

各々の新聞に記事が掲載されました。

   毎日新聞の取材

   朝日新聞の取材


■以下、インクラインの「ねじりまんぽ」に関する

  「たけちゃん」のブログ

のうち、構造諸元にかんするブログを紹介します。

  蹴上のねじりまんぽ 長さ/2016年4月8日

  蹴上のねじりまんぽ/2016年4月3日

  蹴上のねじりまんぽは回り過ぎ/2010年7月19日
⇒> ver-1 にもどる
参考文献

1) 斜架拱(しゃかきょう)/伊藤鏗太郎(イトウ コウタロウ)編訳/1899年(明治32年)

 我が国で初めて斜架拱”ねじりまんぽ”を単独で取り上げた書物と思われます。
 この論文はダウンロード(外部リンク/新しいページが開きます)可能です。

■たけちゃんが現代語訳しました。
あくまで原書を読みやすくするという意図をもって作成したものです。
たけちゃんのブログ「Day by day」からダウンロードすることが出来ます。
「Day by day/「斜架拱」現代語訳」(外部リンク)

2) 鉄道と煉瓦−その歴史とデザイン

/著者;小野田 滋(おのだしげる)/鹿島出版会/2004発行

 煉瓦の歴史や組積方法鉄道構造物としてのデザイン等について記されています。
 全国45都道府県を調査した”足で書かれた論文”で、現在も購入可能です。


3) 阪神間 ・京阪間鉄道における煉瓦 ・石積み構造物とその特徴

/著者;小野田 滋/土木史研究 第20号/2000.5

 京阪神間の煉瓦 ・石積み構造物の特徴を捉え、現地調査結果をまとめています。(PDF/外部リンク

4) 組積造による斜めアーチ構造物の分布とその技法に関する研究
/著者;小野田 滋、河村清治、須貝清行、神野嘉希/土木史研究 第16号/1996.6

 「ねじりまんぽ」の分布や技法についてまとめた論文です。(PDF/外部リンク

5) 関西地方の鉄道における「斜架拱」の分布とその技法に関する研究」

/JR西日本 河村清治、小野田滋、木村哲夫、菊池保孝/土木史研究 第10号/1990.6

 JR西日本管内の「ねじりまんぽ」を本格的に調査し、まとめています。(PDF/外部リンク


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